
お酒の由来は古く、有史以前より作られ消費されていたようです。宗教的背景や文化的背景によってその扱いは様々ですが、時に神聖なものの象徴として、時に悪徳として遠ざけられる存在であるのは、お酒が与える影響……それは享楽であり、影響の大きさからにほかなりません。現代に生きる私達にとって、お酒は日々を楽しく豊かにしてくれるものとして欠くことの出来ない存在。 だからこそ、単純に美味しく楽しみたい!時にトリビア的に「ほぉ!」と膝打つ小ネタや、時にお酒周辺ペダンチックに楽しめるお話を、赤坂のオーセンティック・バー「Bar Moonshiner」のマスター・バーテンダーである関根真樹氏を始め、お酒のプロフェッショナルたちにお話を伺いながらに連載してゆきます。
“美禄”とは:中国「漢書」の経済にまつわる記載項目『食貨志』の中で、“酒は天の美禄”との記載があったことから、お酒の美称として定着したことに由来します。

マスター・バーテンダー
関根真樹氏

果実を漬け込んだものや、ハーブを漬け込んだもの。またそれらを漬け込むために使うスピリッツ(蒸溜酒)の種類や漬け込みの方法よっても、風味に変化が生まれる不思議なお酒です。今回はその中でも「液体の宝石」と称される、麗しのリキュール「マリエンホーフ」について、輸入総代理店・株式会社エーデルリケールの代表を務める中尾友紀氏にお話を伺ってみようと思います。



どんな蒸溜酒を使用してリキュールを作るか?は、リキュールの味わいを決定する重要な要素ですが、一見、漬け込みに使われる副材料はどのメーカーも同じようなアイテムです。もちろん産地にこだわった副材料を使うことで個性を作り出しているということも考えられますが、実は品質や個性に大きく影響するのは、副材料からエッセンスを取り出す方法だったり、漬け込みなどの製造方法に纏わる部分が大きいと言えるようです。


ドイツ・プファルツ地方はその昔ラインファルツと呼ばれており、近年「プファルツ」と改名されました。フランス・アルザスとの国境近くに位置するこの地方は、ドイツで2番目に大きい葡萄栽培地としても有名。そして高名なワイン農家が居並ぶこの街の中でも優れた生産者として名を知られているマリエンホーフ社。マリエンホーフ社は高品質なリースリング種の葡萄から作るブランデーを使い、最高級のリケールを産み出すマニュファクチュール(自社一貫製造するメーカー)で、17世紀から一子相伝で伝えられてきた秘伝の製法技術を守り続けて今に至ります。と、中尾氏は教えてくださいました。
- 湯せんだから当然100度以上温度が上がらない。それすなわちエッセンスの抽出にものすごく時間がかかる
- 温度が高温になり過ぎない分香りの成分の破壊が起こらず、自然な、そして凝縮感がある香りが残る

マリエンホーフのリケールといえば、見目麗しきその色合いが話題になることもしばしばありますが、このような美しい色合いも全て副材料となる素材の天然の色からなるもので、着色料を使用しているものは1つも無いのだそうです。特に梅のリケール「ブルー・プラム」は、あまりにも鮮やかで美しい青色なので、よくお客様からもご質問を頂くようですが、もちろん天然の色。ただしちょっとしたトリックが。抽出したエキスをブランデーに浸透させて1週間から10日ほどの後、色素の一部を脱却して、より深い色を出すというなんとも手の込んだ作業をなさるそう。「ブルー・プラム」の場合は、赤の色素を出来るだけ取り除くことで、その際立つ美しい青を引き出しているというわけです。まるで化学の実験のようなその方法も、詳細は門外不出。ミステリアスなところがあるのもまた興味深いですよね。

好きな時に好きなお酒を飲むのが一番!と思っていても、リキュールってどうやって頂くのがいいのかなかなかピンと来ない……。そんな方も多いのではないかと思います。例えばビールやワインのようなタイプは、いわゆる食中酒としても頂き易いお酒ですよね。(単体でも勿論OKですが)
さてリキュールはどのように頂くのが良いかといえば、やはり食後酒として頂くのが代表的ですよね。
食後酒は「digestif(ディジェスティフ)」とも呼ばれ、文字通り消化を助ける働きも持ちあわせているというポイントは、古来の「薬液」に通ずるお話。今日は食べ過ぎてしまった……なんていう時は、食後のコーヒーや紅茶の後に頂いてみて下さい。
余談ですが、フレンチの一連のコースの中で、デセールの前に出てくるチーズ「なんでこのタイミングで……?」と疑問に思う方もおられるかも知れませんが、実はチーズにも消化促進の働きがあるから、だと伺ったことがあります。
ちょっと話が前後しますが、もちろん食前酒にだって登場するんですよ。
カンパリやベルモットなどのビター系(苦い)リキュールは、胃を刺激し食欲を増進する効果がありますから、アペリティフのメニューの中に見かけることもありますよね。また、フランスでは夏バテ予防に極めて薄いペルノーの水割りを子供に飲ませることもあるんだとか。日本で言う卵酒みたいなものでしょうか。笑


ただ製菓となると、ご自宅で出来る環境がある方も限られているのではないでしょうか?
(お写真はあとあとかとか。さんの季節限定 “春” 桜のケーキひらひら)
そんな方々にオススメなのは、アイスクリームにバタースカッチや種子系のリケール(コーヒーやショコラなど)をかけたり、チーズケーキにブラッドオレンジのリケールを垂らして…なんていう頂き方も。暑い季節なら、クラッシュアイスにそのままふわりとかき氷のようにして頂くのも、人気があるそうですよ!マリエンホーフのHPにおすすめレシピの掲載もありますので、是非こちらも合わせてごらん下さい。

ただマリエンホーフ社のリケールをお取り扱いされておれれるバーならば、ストレートで頂くことをオススメされるかも知れません。何故ならマリエンホーフのリケールの魅力を存分に感じるのであれば、それが一番いい方法だから。
あるいは「香りを愉しむ」という観点から、大変人気な頂き方として、ローゼンのリケールをシャンパーニュと合わせて頂くというエレガントなスタイルもオススメと、ムーンシャイナーの関根さん。なんと大人っぽく贅沢な楽しみ方!その他にマリエンホーフのリケールをカクテルでいただくなら……と、関根氏にお願いし、作っていただいたのがこちらの2品。


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