土にまつわる様々な物語 ~ 生命の源である土について映画「天のしずく」を観て考えた

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2012年11月26日

土にまつわる様々な物語 ~ 生命の源である土について映画「天のしずく」を観て考えた

 

先週はとても勉強をすること・感銘を受けることが多い一週間でした。

●その1
まずは麻布十番のイタリアン・レストラン「IL MANGIARE|イルマンジャーレ」で開催された、大分県臼杵市の農産物お披露目会。
大分県臼杵市は玄界灘に面した街で、温厚な気候風土・農産資源・水産資源豊富な場所で、特産名産は「味噌・醤油」「ふぐ」などが名高いところです。

もちろん豊かな風土を生かし様々な農作物を生産している土地としても有名ですが、特徴的なのは、現在地方自治体を上げて「土の開発」に力を入れていること。臼杵市役所・農林振興課が主体となり、「臼杵市土作りセンター」を開設。こちらでは「うすき夢堆肥」という植物由来の有機物から完熟堆肥を製造し、近隣の農家に販売をしています。

動物由来・科学由来の堆肥が多用されたこともあり、土自体が栄養過多でアンバランスな状況が生じ、それゆえに植物が病気にかかりやすく、病気を防ぐために農薬を散布する……という近代化の功罪と悪循環に陥っている農地が多いのも確かです。
「うすき夢堆肥」は、植物の生育に適したpH5~7程度の弱酸性にバランスを戻すに適した植物性の完熟堆肥であり、健全な土壌の畑で作られた農作物は、生命力の漲る美味しいものが育つのだそう。

野菜の色が濃く、味わいも豊かな野菜たち

この「うすき夢堆肥」を使って作ったお米も大変美味しいそうで、米・食味分析鑑定コンクールでも数々受賞歴のある「にこまる」という品種等を育てていて、近年評価が高くなってきているとか。

農産副産物にも力を入れており、健全な土壌で育った生姜を用いたシロップやドレッシングなども。陳生姜(ひねしょうが)の「はじかみ糖」はお茶うけ・手土産にもぴったりのお品です。

 

自治体が中心となって農産業を支えようとする試み。是非このような活動が広まって「元気な野菜」たちをいただけることに感謝し、経済と自然環境の両輪が共にサスティナブルであることを応援したいと心から思いました。

 

 

●その2

料理家・随筆家の辰巳芳子先生のドキュメンタリー映画「天のしずく」をやっと拝観いたしました。

とても美しく、凛とした生き方は、生命に対する尊びに溢れていました。胸を打たれて涙しておられる方々が続出の良質な映像作品だったことは、様々なメディアで取り上げられている通りです。

私の心に大変残りましたのは、劇中でも「風土」に対する畏敬の念がこめられており、美術家・栗田宏一氏との対話の中で辰巳先生がおっしゃった言葉。

 

「私たちが今いのちを預けているこの風土、それは地球の風土でしょ。地球は宇宙全体の影響を受けて、地球の何もかもが成り立っていると思うのね。だから当然宇宙抜きに地球を考えられないし、地球を考えずに農業も考えられない。」

「土って不思議ね。こうやって手に、宇宙を手のなかに握ることが出来るのですもの。」

 

この地球を美しい生命の息づく星たらしめている、生きた皮膚・土壌。
私達の足もとを、そして命そのものを支えてくれている、あらゆるものの根源である土…。

土の話に限らずですが、まずは是非観て頂きたい。本当に今観るべき映画であり、お勧めの映画だと思います。

蛇足ですが私も、連れも、そして横に座っていた和食の職人のお父さんも、ボロボロと涙を流しながら観ていました。笑