こんなイベントに潜入しちゃいました!

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山形ワインツーリズム ~ Vol.2 食の宝庫<庄内>の農産業のあり方から感じたもの
充実のワイナリー巡りを終えて、たどり着いた「アル・ケッチァーノ」さん。否が応でも期待が高まります。
到着するやいなや、お忙しいであろうに奥田シェフがお店の外まで出てきてくださって、私たちもご挨拶をさせて頂くことができました。同じ敷地内にリストランテ「アル・ケッチァーノ」と、カフェ&ドルチェ「イル・ケッチァーノ」が並んでいます。到着した時にはとっぷりと日が暮れていたので、周りの様子がよく判らなかったのですが、お店の近くにある清涼飲料水の自動販売機には、小さなカエルが沢山……。お店の周りにも自然があふれている環境であることがわかります。
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リストランテの看板。暗くてよく判んない状態ですが……。そして自動販売機に群がるカエルさん。このジュース美味しいですよね。近所のコンビニで売っているのでたまに桃味のものを買います。(^^)
アル・ケッチァーノ & イル・ケッチァーノ
住所:  山形県鶴岡市下山添一里塚83  GoogleMap
電話:  0235-78-7230 (FAXは0235-78-7231)
HP:   http://www.alchecciano.com/index.html
リストランテ「アル・ケッチァーノ」と、カフェ&ドルチェ「イル・ケッチァーノ」の歴史や成り立ちを聞きながら、厨房を含めてご案内を頂き、大変多くの若いスタッフさんがこちらで働いていることに驚きました。伺うところによれば2011年の震災の被災地区から積極的に採用を行い、奥田シェフのもとで修行を重ね、奥田シェフがプロデュースするそれぞれのお店で活躍をされているとか。人を育てるだけでなく、人が活躍する場所を創ることを実践するって、言葉で言うほど簡単なことではないはず。だからこそ奥田シェフの周りには人が集まってくるんだなぁと、しみじみ思いました。
ちなみにこの店名である「アル・ケッチァーノ(Al che-cciano)」は、イタリア語のようでありながら、実は庄内の方言で「あるわよね」みたいな意味の言葉だとか。シェフの頓智が効いたネーミングが可愛らしいですね。
庄内の食材をふんだんに使った、アル・ケッチァーノのディナーは幸せが散りばめられていた!
最初の一皿が出てくるまでの待ち遠しくて仕方ないほどのワクワク感。10皿以上がサーブされたハズなのですが、最初から最後までどのお皿も美味しく楽しませて頂きました。幸せな満足感と、『もし出てくればまだ食べられるかもしれない……』と思うくらい「飽きのこない&期待感をそそる」メニュー構成、山形の食材で作るイタリアンと山形ワインのマリアージュ(この旅、第一のテーマ)を心底満喫!
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木製のウェルカムプレートは裏返すと描かれた野菜の名前が書かれていて可愛かったです。ちなみに私の席に置かれたプレートの野菜は「温海カブ(あつみかぶ)」という種類で山形鶴岡地方の地野菜だそうです
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最初に出てきたの「イシナギのカッペリーニ」イシナギというお魚は初めて食べたのですが、鯛よりも少し風味の強い白身という感じで大変美味。右は「揚げた庄内麩に焼き式部ナスと秋刀魚、エシャロット」お麩の頂き方として新しい提案だなと思いますし、秋刀魚やナスとのマッチングも二重丸◎
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「刺身のタイと燻製したタイをミルフィーユ。イワナの卵添え」焼いた長ネギと黄金のいくらのようなイワナの卵が美しい一品。右は「マグロのたたき、モロヘイヤのケッカソース」モロヘイヤのとろみがマグロをあっさりとさせ、夏の一皿として食のすすむ品。
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「じゃがいもの冷製スープ」ビシソワーズが好きな私は、品の良い味付けが少し物足りなく感じましたが全体のバランスからすると最適!(私はがっつりビシソワーズを飲みたい衝動に駆られただけ。笑)右は「稚鮎とだだちゃ豆のリゾット」稚鮎の内臓の苦味が、お米とだだちゃ豆の甘みを引き立てて大変美味!
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グラニテは「マスタードを和えたバニラのジェラート、きゅうりの辛子漬け添え」個人的に一番驚いたお品はコレかもしれません。甘しょっぱい、そしてほんの少しピリリとしたこの味は初めての体験!きゅうりの歯ごたえがまたクセになります。右は「ノドグロのヴィンコットソース、長芋の竹炭焼き添え」こちらも凝縮感のある魚の旨味と、あっさりとした突出し過ぎないソースが良いですね。
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なんとこの日は<シニフィアン・シニフィエ>の志賀シェフから、パンの差し入れが。美味なる庄内のイタリアンを食べながら最高のパンを頂く幸せ……!志賀シェフありがとうございました!(実はこの旅行、志賀シェフの「山形行きたい!」リクエストが発端となり、あとあとかとか。の川村さんが企画なさったものなのです……)
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「トマトとタコのフレーグラ」もちもちプチプチとした食感と添えられたルッコラの香りが絶妙で、これもお腹いっぱい食べたくなるメニューの一つ。右は「漢方牛のグリル、山形のだしを添えて」こちらのお肉、味わい深い赤味で、焼き加減も味の絶妙。脂身嫌いの私は、世の中のお肉がみんなこうだったらいいのにとさえ思いました。
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「ホゲットのグリル。糸カボチャとパイナップルのマリネ添え」ホゲットとは、ラムとマトンの中間の齢の羊で、アル・ケッチァーノさんと古くからお付き合いのある丸山牧場で育てられているそうです。だだちゃ豆を食べて育っているため、マトンの特有の臭みがほとんど無く、他では味わったことがない食べやすさと旨み。右は「羊のモツ」おそらくレバーだと思いますが、フレッシュでついつい満腹のハズなのにつまんでしまいます……。罪な一皿です。
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こちらは「だだちゃ豆のプリンとロールケーキ」プリンには味醂のソースがかかっており、混ぜて食べるとだだ茶豆の甘みと香りに厚みがでて美味。ロールケーキは大変キメ肌で柔らかいけど水分量の多いスポンジが、少し和の雰囲気をたたえていたように思います。右は本日めぐったワイナリーさんのワインの数々。お食事にあわせて出していただきましたが、やはり食事と合わせるとテイスティングの時とは一味違った美味しさを見せてくれました。感謝!
達成感と幸せな気分に満ちたこの日のお食事は、私の美味しく楽しい旅の記憶として心に残るものとなりました。
海と豊かな庄内の土地が育む自然の恵み、風土の似たイタリアのシンプルな調理法を取り入れた奥田シェフの料理の数々、そして食を愛する皆さんと囲む美味しいテーブルは本当に幸せの一言につきます。ほんとにこの夜のお食事はどの要素もパーフェクトでした…!

アル・ケッチァーノを支える食材の担い手に聞く、庄内の魅力と作り手の気概
魅惑のお食事から一夜明け、翌朝も早くから行動開始。鶴岡駅前に集合し、いざ今一度のアル・ケッチァーノへ!…え?なぜアル・ケッチァーノ再びかと?
そうなんです、この日はアル・ケッチァーノのスタッフの方から、アル・ケッチァーノを支える食材をめぐるツアーを先導頂く運びになっておりまして、この日もしょっぱなからロケットスタートでございます。
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鶴岡駅前。大きな駅ではありませんが独特の風情があります。
最初にご案内頂いたのは、月山高原。奥田シェフが「庄内の景色を象徴する場所だから」とご推薦いただいたこの場所、本当に緩やかな平原が目下に広がる美しい眺めの丘です。近隣の酪農家が牛や羊のストレスを軽減する目的で、連れてきて放牧する場所なんだそうです。ここで夏の間を過ごし、すくすくと生活するのは、牛や羊にとっても嬉しいことでしょうね。それにしても何十頭の牛や羊を連れてくるのは、なかなか大変な作業ですよね!
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月山高原の景色はまるで絵葉書のよう。道路と丘の高低差があり、クルマを降りると放牧されている様子があまりよく見えなくなってしまうので、クルマの中から撮影した写真(中央、右)ゆえ、ちょっとわかりにくいかもしれないですね。ごめんなさい。
ドライブを続け、次に伺ったのがその名も「羽黒あねちゃの店
羽黒あねちゃの店
住所:  鶴岡市羽黒町狩谷野目字宮野下149  GoogleMap
電話:  0235-62-3895 (FAXは0235-62-5041)
HP:   http://agrin.jp/hp/s-sanchoku/list/t_14.html
こちらは近隣農家の方々の大事に育てた新鮮・安心な農作物が並ぶ直売所です。本当に畑の真ん中という立地にあって、農家さんの集い&憩いの場所になっているのもまた特徴的。私はだだちゃ豆を購入したのですが、「並んでいるだだちゃ豆でもそれぞれ少し味が違うから、試食して決めたらいいよ、こっちのはすっきり味、こっちのは甘みがある味、特徴が違うんだよ。」と、親切に教えてくださった農家さんがおられて、『嗚呼……こういうふうに日々の会話の中で、食材の知識もついていくんだなぁ……』と感じました。農家の方々と直接交流があるって、作り手の人たちにとっても、作る料理の幅を広げたり、精度を高めるためにも、凄く貴重な場所なんだなぁと実感する瞬間です。
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田んぼの真中にある、羽黒あねちゃの店の看板。トタン造りの簡素な建物ですが、中に入るとお宝が満載!色とりどりの季節の野菜が、驚くようなお値段で売られていて、値札を二度見してしまうほど。東京でこのお値段は難しいにしても、これだけの品揃と鮮度がある八百屋さんがあったら嬉しいのになぁ~。
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だだちゃ豆のコーナー。この棚に5種類ほどの生産者や種類の違うだだちゃ豆が並んでいて、試食も出来るんですよ。その時々の好みに応じて、好きな味わいのものを選べる愉しみも素敵ですよね。右側のお写真は品を選ぶ今回のツアー参加者の方々。食のプロが多かったこともあって、きっと私以上に楽しかったのではとおもいます。
次に伺ったのが、「井上農場」さん。
井上農場
住所:  〒999-7683 山形県鶴岡市渡前字白山前14  GoogleMap
電話:  0235-64-2805 (FAX兼用)
HP:   http://www11.ocn.ne.jp/~inoue-fm/index.html

東京ドーム8個分の畑で作付を行う大きな生産農家さん。「作った作物の美味しさを直接評価してもらいたい」と思ったことを発端に、農協を通さずに消費者直販をなさっていて、主な作物は米穀とトマト、小松菜、枝豆など。
娘さんを通して奥田シェフと出会い、食の担い手としての思想に意気投合。庄内という土地、農家の未来を真剣に考えておられる井上さんのお話は、恥ずかしながら知らないことが多かったため、驚きもありました。
井上さんは良いお米を消費者に届けるというシンプルな思いから、旗手として庄内で精力的に活動をしておられる方で、作る品々は奥田シェフのお墨付きでもあり、アル・ケッチァーノで出てくるお米は、すべて井上農場さんのもの。お米や農作物はFAXで注文できる仕組みになっていて、私達も購入することが出来るんですよ。

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井上農場では農薬を使わず、有機肥料 糖蜜・海藻エキス散布などを、食べられるものに由来する肥料で育てておられるそうです。勿論手間はかかりますが、井上さんの目指す美味しいお米には「安心・安全」は、欠かせぬ要素の一つ。もちろんお味も格段に良くなるんだそうです。右は広大な畑がどこまでも続く様子をパチリ。100枚超の畑で作付を行なっている為、目印がないとどこまでがじぶんの畑かわからなくなることもおありだとか。
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トマトのシーズンもそろそろ終わりに近く、「今の季節はもうあんまり美味しいとは言いづらいよね……」と言いながら、ご案内くださったトマトのハウス栽培。様々なサイズのトマトを作っておられるそうですが、写真のトマトはプチトマト。もいでそのまま食べさせて頂きましたが、みずみずしくて美味!ただ井上さんがおっしゃるには、この時期はもう酸味が抜けてきているから、一番美味しいトマトとは言いがたいのだそう。志の高さが、このようなご発言からも伺えますね。

お土産~おまけの1コマ2コマ。
井上農場さんとアル・ケッチァーノさんで頂いてきたものをご紹介。
井上農場さんからはトマトの加工製品をいくつか頂いたのですが、樹熟トマト(樹に成った状態で完熟させたトマト)をそのままデザートにしたもの。本当に美味しくて驚き!糖度が高いから、加糖しなくてもデザートとして頂けるのです。夏の暑い日のデザートにもぴったりですし、何より美容と健康に良いものが食べやすく加工品になっているということが嬉しいですよね。
アル・ケッチァーノさんからはリモーネ他数種の焼き菓子を。言わずもがな幸せの味で、お家で少しづつ楽しんでいます。
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井上農場さんから買い求めてきたものたち。トマト由来の加工品もかなり美味しい!特にオススメは<コシヒカリ>と<樹熟トマトそのまんま>。<樹熟トマトそのまんま>はデザートに最適!アル・ケッチァーノさんのリモーネを始めとした焼き菓子の数々。お菓子職人としての奥田シェフの一面も垣間見えます。

旅を振り返って
山形という土地に関して、「庄内の食材は優れているにもかかわらず、売り込み下手で奥ゆかしい庄内人気質のせいか、現在のように認められてはいませんでした。」と奥田シェフがメッセージのページで書かれておられるように、評価の高まる機運はあるものの、土地の方々の奥ゆかしさからあまりPRはされていないよう。ですからきっとまだ山形の素晴らしさを体験したことがない方も多いハズ。(私もこの旅行までほとんど知らなかったことを大変後悔しています。)
勿論、一時の流行のような取り上げられ方ではなく、山形の良さが浸透して欲しいなとおもいます。そのためには私達消費者が「良い物は良い」と判断できる審美眼を持つことが、第一歩ですよね。ですからまず私達が、美味しい食事ってなんだろう?ってことを、今一度考えてみたいですよね。
実は井上農場さんを後にして、酒田に移動し「レストラン欅」で、魚がメインのフレンチを頂いたり、「土門拳記念館」を訪問したりと、書き記した以外も本当に盛りだくさんの旅でした。(……あ、前日のランチは実は美味しいお蕎麦を頂いたりもしたんですが、お店の名前を失念……。)こんなに清々しい気分で帰路についた旅は久しぶり!の充実感。
また行きたいなぁ~。とりあえずは、今回訪問したワイナリーさんや農家さんのお品を取り寄せて、今回の旅の余韻を楽しもう。そろそろ新米の時期ですから、井上農場さんのお米も期待しちゃいます!
◎その1: 山形ワインツーリズム ~ Vol.1 国産ワインの未来を担う造り手たち 
◎その2: 山形ワインツーリズム ~ Vol.2 食の宝庫<庄内>の農産業のあり方から感じたもの

TEXT By n.okumura
SPECIAL THANKS TO あとあとかとか。
Published: Sep 19, 2012